参列のマナー(身だしなみ編)

葬儀というのは、そうそう参列する機会があるものではありませんから、マナーについてもよく判らないことって沢山あると思います。
今は、判らないことはネットで調べるのが主流ですし、葬儀のマナーに関してもちょっと検索すればすぐに色んなページが出てきます。でも、中には首を傾げてしまうようなものや、正しいのかもしれないけれど、いやいや今時それは……と苦笑いしてしまうものもあるのが事実です。

葬儀の場において最も忌み嫌われるものは、恐らく殺生でしょう。ゆえに、殺生を連想させるものがNGとされています。例えば、毛皮や革製品や肉や魚料理です。
ですが、少し考えてみて下さい。男性の靴やベルトや腕時計はほとんどが革製品です。ある程度の年齢の方なら、合皮はほぼ身につけないのではないかと思います。では、葬儀のためにわざわざ合皮のものを買い揃えなくてはならないのでしょうか。
気にしなくていい、とわたしは思います。なぜなら誰も気にしないからです。男性の革靴が本革であることを咎める人は現代にはいません。多分みんな本革です。
例えば冬場なら、首元のファーは外す、毛皮のコートや革ジャンは避ける、くらいでいいと思います。
ちなみに、肉や魚料理については、精進料理という言葉を聞いたことがあると思います。昔は肉や魚を一切使わない本当の精進料理が出されていました。現代では、お通夜に参列して、通夜ぶるまいの席にお寿司がないなんてことあったでしょうか。精進落しも、精進というのは名ばかりで、今ではお肉もお魚も普通に使われています。なぜなら誰も気にしないからです。

次に装飾品に関して。
これも、「華美な装飾は控える」くらいで、さほど気にする必要はないと思います。葬儀のマナーを謳っているサイトの中には、時計もタイピンも指輪も眼鏡もNGなんて言っているものもありますが、ちょっと待って下さい。眼鏡はお洒落アイテムである前にれっきとした医療器具です。指輪は、さすがにクロムハーツは控えた方がいいとは思いますが、結婚指輪などは問題ありません。
女性の方で、真珠のネックレスはしなければならないのでしょうか、というのもたまに訊かれます。真珠なら「してもいい」というのであって「しなければならない」というわけではありませんから、ご自由になさって大丈夫です。
ちなみに、なぜ真珠がOKなのかというと、真珠は涙の象徴とされているからです。真珠の粒が涙の形を連想させるとか、人魚の涙が海に落ちて真珠になったとか、由来は諸説ありますが、そういうわけで真珠は葬儀に相応しいアクセサリーとされているのです。
女性のお化粧について。これも、昔は片化粧と言って、口紅はしないのがマナーでした。悲しみのあまり、口紅を塗るのを忘れてしまいました、ということだそうです。お香典の表書きに薄墨を使うのと似たような習わしですね。でも、今では口紅を塗っていない女性の方が珍しいくらいです。尤も、最近は皆さんマスクを着用しているので口元は見えませんが。

お通夜の場合は、仕事の後でそのまま参列するといったこともあるかと思います。そういう場合は喪服ではなく通常のスーツで問題ありません。ネクタイだけ黒いものに替えておきましょう。女性の場合も、なるべく落ち着いた色合いの服を選ぶようにすれば何ら問題ありません。

時代遅れの(言っちゃった)マナーに囚われるよりも、よっぽど気に掛けて頂きたいものがあります。それは靴です。いやいやさっき靴は気にしなくていいって言ったじゃん、と思った方、丁寧にお読み下さり有難うございます。でも違うんです。素材ではなく、踵です。
靴の踵って、年単位で放置すると劣化します。葬儀はそう頻繁に参列するものではありませんから、いざ参列するとなった時に劣化してボロボロになっていたなんてことが起きたりします。行く前に気づけばまだいい方ですが、斎場に着いてからだと悲惨です。葬儀用の靴をわざわざ買い揃える必要はないというのにはこういった理由もあるのです。