グリーフケアとは

大切な人の死に直面した時、人は深い悲しみや衝撃、失望感に見舞われます。心的な症状だけに留まらず、食欲不振や睡眠障害といった身体的な不調が現れることもあります。死別に伴うこの心身の反応を「悲嘆(グリーフ)」といいます。
悲嘆は、死別を経験した人間の正常な反応です。勿論、悲嘆の表出には個人差があります。個人の思考、環境や経済的背景、宗教的背景などにより、日常生活に支障をきたす程適応能力を失ってしまう人もいれば、殆どその反応を窺い知ることができない人もいます。また、死因や年齢なども影響すると言われています。
様々な要因による個人差はあれど、残された人々のこうした悲嘆の消化作業と消化過程をグリーフワークといい、その援助をグリーフケアといいます。

ひとくちに悲嘆と言っても、具体的にはどのような症状があるのでしょうか。
グリーフの反応には大きく分けて三つあります。
ひとつめは、孤独、寂しさ、やるせなさ、怒り、罪悪感、自責感などといった精神的な反応。
ふたつめは、睡眠障害、食欲不振、頭痛、目眩、便秘や下痢、疲労感といった身体的な反応。
そしてみっつめが、ぼんやりする、引き籠もる、反対により動き回って仕事をしようとする、落ち着きがなくなるといった、日常生活や行動の変化です。

以前は、グリーフはショック期、喪失期、閉じ籠もり期というプロセスを経て、癒し・再生期へ至ると考えられていました。けれど、現在ではグリーフは段階的、位相的な経過を辿るのではなく、重複したり、時に行ったり来たりしながら回復へと向かっていくと考えられています。
前述の通り、現れる症状の度合いや期間については個人差があります。特に日本人は感情を激しく表出させないことを美徳とする傾向があるので、傍目には殆どそれとわからないこともあるでしょう。
死別による喪失の悲嘆は深刻ではありますが、人の正常な反応です。その悲しみを癒すためには、充分に悲しむこと、そして何らかの方法で悲しみを表出していくことが大切です。それには、受け止めてくれる人の存在や、自ら悲しみを整理していく作業が必要です。
あなたが故人を大切に思うように、あなたのことを大切に思う人の援助を、素直に受け入れてみて下さい。時には素直に人様の力をお借りし、そしていつか人生の中でお返ししようという思いを失わずに生きてみましょう。
医療機関を受診したり、ワークショップに参加してみるのもいいかもしれません。同じ環境に置かれた人たちと本音で語り合い、共感を得ることは、悲嘆回復の手助けとなることでしょう。

参考文献:はじめて学ぶグリーフケア/日本看護協会出版会