参列のマナー(お作法編)

残念なことに、あなたの元に訃報の連絡が入り、急遽お通夜に参列することになりました。何を準備すればいいでしょうか。
第一に喪服が必要ですが、そちらは「身だしなみ編」をどうぞ。
お通夜、葬儀に参列することが決まったら、お香典を用意すると思います。お香典袋は最近ですとコンビニでも売っていますので、慌てなくて大丈夫です。ですが、いざ買いに行ってみると、お香典袋と一口に言っても、御霊前、御仏前、御香典、お花料、と表書きも様々で、どれを選べばいいのか判らないという方もいると思います。
一番無難でオールマイティに使えるのは「御霊前」です。これを選んでおけば間違いありません。

ところで、御霊前と御仏前はどう違うのかご存知でしょうか。
大半の仏教の教義ですと、死者は臨終から四十九日(七七日)までの間は、霊の状態であの世とこの世の間を旅するとされています。四十九日の旅を終えて成仏、つまり仏に成るのです。ゆえに、この四十九日の前か後かで表書きが変わってきます。お通夜や葬儀はまだ霊の状態ですから御霊前、四十九日法要や一周忌法要などは御仏前となるわけです。
例外的に浄土真宗だけは即身成仏、つまりご臨終の瞬間に仏になるという教義ですので、厳密にいうと御霊前は使用しません。ですが、親族ならともかく、一般参列者の方が事前に宗派まで把握するのは難しいので、御霊前で差し支えありません。
因みにこのお香典、キリスト教では「お花料」、神道では「玉串料」と言います。事前に宗教が判っていればこちらを使うのが最適なのですが、どちらの場合でも御霊前でも問題ありません。
のし紙に名前を書く際には、弔事の場合は薄墨を使うのがマナーとされています。なければ普通の墨でも結構です。

さて、袋の問題は解決しました。次はお金を用意します。結婚式に代表される慶事には新札を使用することが多いですが、こちらは逆に新札は使用しないのがマナーとされています。あらかじめ用意していたようで縁起が悪い、ということですね。
ところが、お財布を開けてみたら新札しかない!! そういう時はぐしゃぐしゃに丸めて使い古したように見せかける……ではなく、端の方にちょっと折り目をつけるだけで大丈夫です。
袋の裏の折り返し部分は、こちらも慶事とは逆で、下部が内側、上部が外側になるように折り返します。これには「悲しみを流す」という意味が込められているようです。
ここまで書いてきましたが、最近ではお香典を辞退する御喪家も少なからずいます。強引に渡せば受け取ってはもらえるかもしれませんが、かえって迷惑になりかねないので、逝去の知らせと共に香典辞退の申し出があった場合は素直に従いましょう。

次に、仏式であればお数珠を用意します。
お数珠も、よく見ると色んな形状や長さのものがあります。実は宗派によって微妙に違うんです。ご自身の宗派のものか、或いはどんな宗派にも対応できる略式のものもありますので、どちらかを用意しておくといいでしょう。
お数珠は左手に持つのが基本です。仏教では左手が不浄の手とされているためです。なので、左手にお数珠を持ち、右手でお焼香をするのが基本のスタイルです。

葬儀の現場に立っていて、一番よく訊かれるのがお焼香の作法です。
お焼香の回数は宗派によって違います。真言宗(3回)や曹洞宗(2回)など決められている宗派もあれば、こだわらない宗派もあります。
また、ご自身の宗派と参列したお通夜の宗派が必ずしも同じであるとは限りません。その場合はご自身の宗派に則っても構いませんし、その時の宗派に合わせても構いません。
新型コロナウイルスの影響で最近では大規模な葬儀は少なくなりましたが、参列者の多い葬儀では、時間の関係で宗派にかかわらず一回の焼香をお願いすることもあります。
どの場合でも、順番が回ってきたら焼香台に進み、先ずは遺影に向かって一礼しましょう。心を込めてお焼香をくべ、遺影に手を合わせます。お焼香が済んだら、速やかに元の席に戻りましょう。

色々と書き連ねましたが、大切なのはマナーではなく、気持ちや心遣いです。あまり囚われずに、故人や遺族に対するお悔やみの気持ちをもって参列することが大切です。