直葬や一日葬と共に近年増えているのが、無宗教葬です。仏教、神道、キリスト教といった宗教に則らない葬儀を無宗教葬と呼びます。通常の仏式や神式やキリスト教式の葬儀では、それぞれのしきたりや儀式を伴いますが、無宗教葬はこの宗教儀礼を伴いません。
どういうことか、平たくいうと自由ということです。
仏式の一般的な葬儀だと、一時間の式時間のうち約四十分程を読経が占め、この中で焼香も行います。残りの二十分がお花入れと喪主挨拶です。
この読経の四十分間が丸々自由です。
無宗教葬のメリットは、何といっても自由なところです。宗教儀礼やしきたりに囚われることなく、本当にその人らしい葬儀を行うことができます。
例えば生演奏を取り入れて音楽葬にしたり、故人を囲んで最後のお食事をしたり、スライドショーや動画を流したり、思い出を語り合ったり。故人との思い出の曲を皆さまで合唱されたこともありました(※式場によっては制限がある場合があります)。
勿論、式の中では焼香をしても献花をしても構いません。
一方でデメリットもあります。
無宗教葬が増えた背景には、宗教離れがあるのは間違いないでしょう。
菩提寺がないから、生前宗教とはあまり縁がなかったから、本人が戒名はいらないと言っていたから、御布施を払いたくない、などなど……。
宗教者による司式がなく、自由であるということは、即ちご家族の皆さまで式を創り上げていかなければならないということです。
「こういう葬儀にしたい」という明確なヴィジョンやコンセプトがある方にとっては、唯一無二の素晴らしい式が実現可能な形式です。ですが、ただぼんやりと消去法的に選ぶのはお勧めしません。間延びした式になります。
それでも、新型コロナウイルス流行以前はまだよかったのです。それなりの人数の会葬者が参列すれば、ひとりひとりに献花を頂くだけでも時間がかかりますし、弔辞や弔電の時間も必要でしょう。一時間はあっというです。
また、無宗教葬は地方や高齢の方にはまだまだ浸透していない葬儀形式でもあります。「葬儀という感じがしない」「お経がないなんて成仏できない」といった意見の相違で後々揉めることがないように、親族間で話し合っておくことも大切です。