人は、死者を埋葬する唯一の動物だとされています。
葬儀の歴史を紐解いていくと、人が何らかの形で死者を弔う儀式を行うようになったのは、ネアンデルタール人にまで遡ると言われています。実に四万年も前のことです。
遥かな昔から行われてきた、死者を弔うという行為。
その「葬送」という儀式が担う役割とはどういったものなのでしょうか。
ひとつには勿論、遺体の処理があります。人の身体は(人に限ったことではありませんが)死を迎えたその瞬間から腐敗がはじまります。故人の尊厳を守るため、そして公衆衛生の観点からも遺体の処理は葬儀の重要な役割のひとつです。
ですが、葬儀は単なる遺体の処理ではありません。
そこには死者を悼み、死者との別れを惜しむことで死と向き合い、やがて悲しみを癒していくという、心のプロセスがあります。これをグリーフワークと言います。葬儀というのは遺された者のための儀式という側面も持ち合わせており、大切な方との別れにしっかりと向き合い送り出すことは、その悲しみを癒す最初のステップでもあるのです。
また、人は社会的な生き物ですから、家族や近親者だけではなく、多くの方と交流を持ちながら生きています。そうした社会的に繋がりのあった人たちとの別れ、いわば「社会的な別れ」の場でもあることを忘れてはいけません。
そして最後に、葬儀は遺された者のための儀式であると同時に、やはり故人のための儀式です。故人に感謝し、故人を偲び、冥福を祈る。死者の霊をこの世からあの世へと送り出す。そこにはしばしば宗教的な儀礼が伴いますから、仏教でいうところの供養を、神道では鎮魂を、キリスト教では追悼を行うのです。
故人を感謝と共に送り出し、遺族が悲しみを昇華し、社会的な別れをする。葬儀とは、関りのあった様々な人たちにとって、そうした大切な場なのです。
いつか必ず訪れる、避けては通れないことだから、後悔のないように送ってあげたいものですね。